雑誌広告2024_07
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温故知新のビジネスモデルョンはより一般の消費者にとってもなじみ深い領域にまで浸透する。契機になったのは、2013年にアドビが、クリエイター用の高額ソフトウェア(当時30万円程度)である「クリエイティブスイート」を、月額5000円程度のサブスクリプションである「クリエイティブクラウド」に完全移行したことだ。これまで高額で手を出せなかった潜在的ユーザーが会員になることで、一気にスケールを拡大した。 さらに2015年以降、サブスクリプションは、「サブスク」として一般家庭や学生にまで波及する。今や日本人にもおなじみのネットフリックスや、スポティファイといった動画や音楽などのポップカルチャーにおける配信サービスがグローバルに拡大したのだ。その成功もあってディズニーなどの巨大企業も次々に参戦した。こうしてエンターテインメント領域では、SaaSによる映像や音楽の配信を通して、いわゆる「デジタルサブスク」が多くの人の知るところになった(図①)。 そしてデジタルで市民権を得た「月額し放題」という支払い方法そのものが、今度は日本のお家芸であるものづくり企業やもの売り企業へ波及する。とりわけ、2018年は日本においていわゆる「モノ系サブスク」が一気に流行をした年と言える。トヨタ自動車によるト型コミュニケーションロボットソニックの家電など、伝統的ものづくり企業がサブスクに盛んに参入した。あるいは、ブランドバッグや洋服のレンタル、美容室やネイルサロンといったサービス企業もこぞってサブスクを取り入れた新規事業を展NTOや、ソニーのペッ〜KI  4aibo、さらにはパナ開した。こうして、サブスクは、日本の一般消費者の間で市民権を得ることとなった。 このようにサブスクビジネスは急拡大し、現在は消費者の日常生活のどこかに必ず存在するほど拡大をしている。この流れは一見すると、デジタルビジネスによる発明と捉えられがちであるものの、実際のところそうではない。サブスクリプションという語自体は、「定期購入」や「継続購入」を意味しているにすぎず、実は昔からある形態「新聞の定期配達」と同じことなのだ。世界的に見ても「新聞の定期配達」の歴史はとても古く、1609年にはストラスブール、1620年にはウィーンで週に一度、新聞の定期配達がされている。それが月刊誌や週刊誌に波及し、現在に至る。ちなみに日本の新聞の定期配達は、1872年、毎日新聞の前身「東と京日日新聞」ができた頃に登場し、75年頃にはうきょうにちにちしんぶん新聞販売店が開業したといわれている。 ビジネスモデル概念の醍醐味は、一見無関係、まったく接点がなさそうな業界で成功したビジネスが備えている要素を、自社に取り入れてオリジナルのビジネスを作り出すことにある。その意味合いにおいて、新聞や雑誌業界で当たり前であったサブスク(継続購入)が、デジタル時代に突入して、スタートアップのプロダクトやサービスに取り込まれ、ビジネスモデルのイノベーションとして注目を浴びたのだ。さらにそれが製造小売業にまで波及したと言えるのである。クリプションの「継続的にわずかな金額を支払うほうが消費者にとっても負担感が少ない支払い方式」というメリットを自社のプロダクトに適用することで継続収入が得られる一方、顧客にとってもお得感やアップデートによる利便性の向上というビジネス特性が相まった。それゆえの成長なのである(図②)。企業にとっては、サブス図① SaaS

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