雑誌広告2024_07
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Ⅳビ変ジ革ネすスるモヒデンルトを❶小さく続ける❷目線をずらす32 6置されたカメラが顧客の動向を捉え、AIや顔認識によりすべてがデータ化されて分析され、以降提案するテーマに反映されていた。顧客行動から「買わなかった理由」も解析、報告されるので、取引先企業には即座に改善策を提示できるのだ。 こうしたマーケティングのエビデンスを用意した結果、取引先であるメーカーは、ユーザーのプロダクトへの認知や興味について知見を得ることができる。プロダクトが売れなくても、取引先企業の広告活動やプロダクトの相談に乗るため、広告費やコンサルティング料としての収益が成立し、高い利益率を誇った。一説によれば※、売り場面積あたり、ニューヨークの老舗デパートのメイシーズの12倍を稼ぐといわれるほど、このビジネスモデルは注目を浴びた※。 このようなビジネスモデルは、顧客からの売上金額に利益を依存していないため、売らなくても利益を確定できる店、すなわち「売1 5の方法を見てきた。最後に、異業種で起こっていることを自分ごとにするための3つの視点を示しておきたい。これらは、どの企業にも通用するビジネスモデル変革のヒントになるため、ぜひ自社に当てはめて考えてもらいたい(図④)。ビジネスモデルの観点から見れば、顧客からの支払いが継続することは、企業にとってなにより大きな旨みがある。大金を一気に回収するのではなく、顧客の負担を小さくして、継続的に支払ってもらう。これが「小さく続ける」の意だ。サブスクリプションはこれを実現したモデルのひとつだ。とくにこれまで販売モデル(販売時にのみ支払いが発生する従来の取引)を採用してきた企業にとっては、この継続収益モデルほど羨ましいモデルはない。なぜなら、顧客の数が変わらないとすれば、来期以降の収益が予測できるからだ。その効能は大きい。将来収益を保守的に見積れるので、倒産しにくい健全な財務体質をつくることができる。固定的に入ってくるであろう収益の範囲で固定費を賄うことができるからだ。またそれによって、どのタイミングでどれだけの投資をすればよいのか明らかになり、戦略やイノベーションが実行しやすくなる。あなたの企業のプロダクトで「小さく続ける」課金形態を採用すれば、どのような新ビジネスを生み出すことができるだろうか。販売モデルを採用している企業は、あくまでもメインプロダクトに集中して、そこから課金する。一方、メインプロダクト以外にも課金ポイントを設定し、しかもそこから利益の大部分を得るという非常識なモデルが存在する。広告モデルはその典型例だ。利益の柱をプロダクトとして最も目立つ雑誌や新聞の対価そのものから、広告へと「目線をずらす」ことをしたのだ。それにより、安価でプロダクト(新聞・雑誌)を提供することに成功した。これがさらに進み、情報の配信らない店」として注目されることとなった。ほかにも有名な事例としては、年にサンフランシスコで登場したb8ta(ベータ)が挙げられる。オンライン通販でしか取り扱いのないプロダクトを店頭に並べ、そのデモンストレーションを行いながらユーザーの感触をデータ化している。オンライン通販では決して得られない実体験に基づく情報なので、メーカーにとってはユーザーとつながれるまたとない貴重な機会となる。 メーカーからの広告やコンサルティングによる報酬を利益の柱とするため、販売による収益を得なくてもビジネスが成り立つ。このビジネスモデルは、旧来の「広告モデル」をアレンジして小売業に取り入れたことで、新たなリテールビジネスとして新規事業を生み出した好例といえる。以上、メディア業界が影響を与えた革新的な収益化※2 2019年6月の筆者自身がStoryにて行ったインタビュー調査と現地調査による※3  しかし、Storyが名実ともに実力を持ち始めた2018年、メイシーズに買収された。その後、メイシーズがStoryのノウハウやセンスを活用して、取引先企業との課金関係をもとにメイシーズ本体の大改革を実現できるかが注目を集めた。だが、残念なことにStoryは現在、事実上の消滅状態にある。メイシーズの伝統的な百貨店としてのビジネスモデルとStoryのそれがうまく融合できず、異物扱いされて放置されている。それによりシェットマンもメイシーズを去ってしまった2 0

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