雑誌広告2025_01
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JMAA海外研修団レポートジタルパッケージ導入前の本紙部数が最盛期で約120万部だったことを考えるとおよそ10倍の規模だ。 新聞・雑誌メディアを駆逐し得る存在と喧伝されたオンラインを主戦場とするメディアもまた2010年代の急成長の後、岐路に立たされた。2023年バズフィードは赤字のニュース部門を閉鎖しハフポストに統合。動画で伸びたヴァイスメディアも広告収入の減少で連邦破産法を申請した。実現してきた企業たちだ。ジャーナリストの津山恵子氏は話す。 「アメリカの新聞と言えば低価格での駅売りが中心で、ビジネスモデルとしては広告収入と購読収入の比率が7□3でした。それが現在ではデジタル購読者の増加によって購読料中心のモデルに逆転してきています」 アメリカ三大紙のひとつニューヨーク・タイムズは2011年、月15ドルでWeb+携帯電話での購読パッケージの課金システムをスタート。社内での反対の声をよそに年々売上を拡大し、現在では総購読者数1 000万を誇っている。デ 日本雑誌広告協会の研修団としてニューヨークに渡った我々であったが、研修全体を通して「雑誌広告」のみを焦点とする話題は実際のところかなり限られた。米国では、それほどまでにメディアジャンルの垣根が無くなっており、テレビ、新聞、そして雑誌を出自とするメディアが同じマーケットで鎬を削っている。 こうした状況下で生き残ってきたのは、既存のビジネスモデルを超えた発想を第57回津山恵子氏国際ジャーナリスト。ニューヨークに2003年から在住。政治経済やメディアに精通し、ビジネス誌、新聞、Web等に執筆するほか、報道番組でのコメントや講演でも活躍 そんな中、新たなビジネスモデルで台頭しているデジタルネイティブ第2世代と言われるメディアがある。 「POLITICOという政治情報を発信するメディアは、その専門性の高さと網羅性を武器に購読者を増やし、ニーズの高まりから紙メディアを出すようになりました。議員秘書のレクチャーなどにも活用されていて、その際に重要点にマーカーを引いて渡すなどの需要が大きかったのです」 そして同じく第2世代に位置付けられるのが、AXI OSだ。スマホやタブレッ ここ数年で爆発的な躍進を遂げているAI技術の受け止められ方については、 「人間の記者がAI記者にくわれてしまう、という心配はあまりされていません。基本的にはポジティブにチャレンジをしていこうという考え方が多い印象です」AXIOSでは大統領候補の演説から頻出フレーズを抽出する作業にChatGPTを活用。人の手では長時間かつ多数の労力がかかる場面での使用が始まっている。 「AP通信でも、翻訳、自動要約、見出しの作成などでAIを活用しています。正確さ、公正さ、早さで強みを持つ生成AIの活用の場面はこうした場で広がっていくと思われます」* * * 多面的にボーダーレス化が進む中、生き残りをかけあらゆる発想・手法でマネタイズを図る米メディア。私たちもまた、既存の枠を超える取り組みに日々向き合って行かねばなるまい。転換期を迎えたデジタルネイティブメデイア試行錯誤を繰り返すコンテンツ制作でのAI活用購読者が〝10倍〟のニューヨーク・タイムズトでも読みやすい簡潔な箇条書きを取り入れるなど独自の記事スタイル、短時間で情報が理解しやすい点が支持されている。 「また、記者向けに作成したシステムが、レポート作成やプレゼンテーションといったビジネス場面でも役立つことに商機を見出し、ライティングツールのソフトウェア販売でも成功を収めています」アメリカのメディア市場(2021年状況&2025年予想)をみると、インターネットが突出。また雑誌を含む各メディアで、デジタル広告収入の比率が拡大していくとみられるあらゆるメディアの主戦場がデジタルへ今こそ求められるOUT OF BOXの発想中目優希(小学館)清田恵美子(集英社)写真/伊与田江美(文藝春秋)講演国際ジャーナリスト津山恵子氏3

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