雑誌広告2025_01
4/8

ハーストはOpenAIとコンテンツパートナー契約を結び、過去・現在・将来においてコンテンツ提供をはじめた。ChatGPTに提供したコンテンツには引用や直接リンクがついており情報源が明らか。高い品質の信頼できるジャーナリズムを確たるものとし、新たなオーディエンスへのリーチも可能になった。また、この協力関係により新たなプロダクトを生み収益源の創出も視野に入れている。 世界中で200を超える雑誌版を擁する世界最大のメディア・コングロマリットであるハースト。グローバル戦略と地域毎の戦略を立て実行している。例えば『Esquire』ではジュエリーブランドが数億円を投じ世界32か国で表紙を統一する施策を実施予定。コンテンツを複数マーケットでシェアすることがある一方で、中身は全く違うローカルコンテンツになっている。雑誌以外の収入でも各国での取組みが成功している。日本ではeコマースの売上が大きなものになっているし、英国ではCunardの豪華客船と『Harper's BAZAAR』がSPAプログラムを立ち上げた。インテリア誌の『House Beautiful』は英国大手小売り業者dfs向けにソファーを開発し同社の売上の半分を占める等、各国メディアがブランド力を活かし事業収入を得ている。 テクノロジーの進化に伴い、デジタル購読そして有料会員制度を重視する動きも。例えば日本では「ピアノ」というツールを使い、ピラミッドのような有料会員制の仕組みをとっていて、上位会員と一般会員は価格設定が異なっている。他国でも同様に、上位会員は特別なイベントに参加できる特典がある一方で、一般会員は記事が読めるだけなど、価値を経験してもらうサービスを関与度に応じて提供。顧客との深い関係性をより強力なものにしている。もオーディエンスの拡大を狙っている。加えて、より深い関係性の構築にも集中。デジタル領域への投資は積極的に行っており、6月からは「オーラ」という独自のツールを米国では導入している。どのページをclickし、どのページから買い物をしたのか行動を分析。個人情報を保護しながらも、1stパーティーデータとAIを組み合わせ、広告主がターゲティングに利用できるよう提供する。マーケッターにとって大きなオーディエンスに、的を絞ったリーチができることとなり、KPIに大きな差が出ている。現在、全キャンペーンの25%にオーラを活用しており、この成果もあってデジタル面では2桁成長を記録。更に洗練されたオーラ2・0への準備も進めている。また、メディアとAIの関係も新たな段階に入った。3rdパーティーデータ規制、AI(ChatGPT)を巡る環境などの影響により、大きな変革期にある今。ハーストはどのような戦略をとっているのか聞いた。 他の企業同様、ハースト 明るい話ばかりではない。高級ブランドがクオリティの高い紙媒体を好む傾向は変わらないが、紙媒体の発行部数は世界的に縮小しているし、ブランド自体も減速傾向にあるので2025年の成長幅は鈍化するだろう。収入面だけでなく、Googleなどプラットフォーム側の頻繁なルール変更への対応や、AIとの提携によりどうマネタイズしていくか等取り組むべき多くの課題を抱えている。* * * 日本も米国も直面する課題や施策は共通していた。しかし、米国の方が積極的なAI導入により深いアプローチを実践している。3rdパーティーデータに頼らず如何に自社メディアのオーディエンスを拡大し、デジタルマーケティングを進化させるか。獲得した読者を繫ぎ止める魅力的で細やかなサービスを提供できるか。私たちも急速な対応が求められている。拡大するデジタル市場におけるハースト成長戦略の三本柱松井理恵(光文社)阿部陸(双葉通信社)グローバル戦略とローカルに根差した手法を両立ピラミッド型会員制度で有料顧客を囲い込み減速予想の2025年とこれからの課題オーディエンス拡大&より深い関係性の構築Debi Chirichella氏ハースト・マガジンズ社長Jonathan Wright氏ハースト・マガジンズ・インターナショナル社長Joe Martin氏ハースト・マガジンズメディア・ライセンシング担当副社長出版社の取材からHearst Magazines USA4

元のページ  ../index.html#4

このブックを見る