活字もイイけど動画もね!!─雑誌と動画、その現状と可能性─雑誌編集部による動画制作が注目を浴びている。媒体のテイスト、世界観を活かした動画がクライアントの興味、関心を集め、年々その数は増加傾向だ。クライアントは何を目的に動画を発注し、また編集部はどのような意図で制作しているのか、紙媒体との共存の可能性は…? 動画制作に力を入れる編集部、クライアントの声から、雑誌が手がける動画制作の意味と効果を探る。取材・文/阿部民子 「雑誌にとって、動画は今や、やらなくてはいけないもの。既に、動画でないと新規顧客に届かないアルゴリズムになっています」と話すのは、マガジンハウス ビジネスプロデュース部で部長を務める長ちょう勲いさおさんだ。 「メディアとしての雑誌の価値は、つくる力としての世界観、届ける力としての影響力の2つがあると考えます。弊社はロゴ(雑誌)がもつ世界観に対しては揺るぎない自信がありますが、届ける力に関しては、ご存じのように書店数が激減、駅の売店もなくなり、かつブランドが存続するための普遍の法則は、新規顧客の獲得であることはよく知られています。常に新しい顧客に届けないとブランド自体が存続できず、新しい人が流れ込んでこないことがブランドの力を弱めてしまいます。雑誌に関していえば、従来の仕組みが脆弱になりつつある現在、どうやって新たな人に届けるかを一番に考えなければいけません。現在、最も多くのユーザーを抱えるのはSNSを中心とした大規模プラットフォーマーです。広告収益を高めたい彼らとしては最もユーザーの滞在時間が長い動画コンテンツを優先します。ただし一般企業がゼロから動画を作り続けるのは難しい。 一方で、我々はコンテンツをつくるのが仕事であり、それを活かすことができるアドバンテージがあります。そこで、普段のコンテンツづくりのなかに動画をルーティンとして入れて、新規顧客を獲得しようと、現在取り組んでいます」 まず始めたのが、『BRU TUS』での動画プロジェクトだ。『BRUTUS』にターゲットを絞ったのは、担当編集長の意向をはじめ、雑誌ブランドが動画と親和性があり、早く成長できそうなこと。さらに、毎号、特集が別雑誌のように変わり、内容も多岐に亘る同誌の特徴から、特集と動画を連動させることで、さまざまなタイプの動画をつくれることが決め手となったという。2022年の暮れには、ブランドビジネス局内に動画チームを結成。ノウハウを1か所にまとめて、社内的なコンサルなどもできる体書店に行く行動自体も減っている状況です。 今まで雑誌は、書店や取次店の力によって、発行日になれば全国津々浦々に同時に届けることができました。それはある意味、本を届けると同時に、雑誌名を宣伝していたことになります。制を整え、全社的に広げていこうと考えたという。 「編集部を説得する際には、3つの目的を掲げました。1つめは『認知拡大』です。本誌の特集と連動したムービーを流すことによって、雑誌ブランドの認知度のアップ、本の宣伝になること。2つめが『クライアントへの広告セールス』。動画の広告市場が大きく伸びているだけに、クライアント獲得の可能性があること。3つめが『人材育成』。特に若手社員にとって、本をつくっているだけでなく、楽しみながらデジタル、ムービーにチャレンジでき、ノウハウを得ることができることです。 実際のつくり方としては、動画プロフェッショナルである外部プロデューサーと契約。動画制作にあたり、1000号に及ぶバックナンバーに目を通してもらうのをはじめ、歴代編集長ク動画で「届ける力を強くする」マガジンハウスマガジンハウスビジネスプロデュース部部長長 勲氏3
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