出稿も増えました」(八頭司氏) こういうケースで強みを発揮するのが、顧客と1 0 0%直結していることだ。 「『ハルメク』はすべてのお客さまと直接つながっているので、全員の顔が見えています。これは書店で流通する雑誌と違うところです。そのメリットを最大限活かした取組みができていることが大きく伸びた要因だと思います。 たとえば、ハルメクの読者ハガキには、〝あなたから『ハルメク』への短い手紙。最近の悩み、気になること、記事の感想を教えてください。〟と書いてあるのですが、それが毎号約2 000通戻ってきます。それを編集部全員で手分けをして読み、必要なものはデータ化して検索できるようにしてあります。 さらに、もう一つランダムで抽出した1000人の 前回、『雑誌広告』で『ハルメク』を取り上げたのは2019年4月のこと。その時点での部数は約23万部だったが、それから6年。現状は46〜47万部で推移しているという。雑誌業界全体が苦戦する中、このトレンドに逆行して凄まじい伸びを示している功績が、2 017年に就任した山岡朝子編集長の手腕によるものであることは、よく知られている。では、山岡編集長はどんな改革をしたのか? 今一度、振り返ってみよう。 「実は山岡が編集長になる以前から、体制整備はしていました。社長の宮澤孝夫はコンサルティング業界から来た人なので、編集領域はある意味では聖域と考えていたのですが、『お客さまの声を聞いて反映できているのか?』という指摘はしていました。それで、2 014年に『生きかた上手研究所』というシンクタンクを作りました。そういう器はできたのですが、ただそれをうまく活用できていませんでした。それを打開するために、山岡をヘッドハンティングして編集長に就任してもらったわけです。 そもそも『ハルメク』の前身である『いきいき』はシニア誌という定義で編集していました。でも、読者はもともと女性誌の全盛期に雑誌を読んでいた方々。なのに年をとったからといって、なぜシニア誌を読まなければならないのか。山岡はまずここから再定義したのです。そして、美容、おしゃれ、旅行、料理など、編集内容の幅を広げていきました」(ハルメクホールディングス広報・IR室長入山真一氏) 『ハルメク』の部数増のきっかけとして、よく知られているのが「スマホ」特集だった。 「『いきいき』の感覚からすると、読者はスマホなんて使えないだろうし、使わないだろうという思い込みがあったので、最初はアンタッチャブルな特集だと思われました。ですが、山岡がニーズやデータインサイトを捉えてスマホ特集をやるという決断をしました。その結果、その号だけで新規の読者が6万人以上増えたのです。その後もスマホ特集をやると、同様に新規読者が獲得できるようになりました」(ハルメク・エイジマーケティング営業局長八頭司尚氏) このスマホ特集の大反響は携帯のキャリア会社にとっても渡りに船と言えた。 「当時、キャリアさんは割当電波の関係で、ガラケーからスマホへ切り替えをしなければいけない時期でした。でも、このハードルが高いんですね。ショップへ行っても何を質問すればいいのかわからない人も多い。そこで、『生きかた上手研究所』の調査機能を使ってボトルネック調査をしたり、読者のイベントや座談会を行うことで、必然的に広告書店数、コンビニエンスストアの雑誌取扱い店舗数の減少、そして近年著しい用紙代の価格高騰と配送コストの上昇…。雑誌を読者に届けるための環境が非常に厳しい時代になっている中で、確実に購入をしてくれる「定期購読者」の獲得に力を入れている雑誌が増えています。今回の特集は、購読者に直接届けるビジネスモデルを選択している2つの雑誌を取材して、どのようなビジネス戦略を描いているか紹介します。取材・文/京谷六二「書店で売らない雑誌」が描くビジネス戦略読者と直接つながることで広がる可能性とは?ハルメクホールディングス広報・IR室長入山真一氏【CASE1】定期購読者46万人雑誌を入口にした会員向けビジネスとは『ハルメク』3
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