では、ビジネスパーソンは欲しい情報をどこから収集しているかというとネットなんですね。したがって、当社が「ダイヤモンド・オンライン」をベースにしたデジタル・サブスクリプションへ踏み出すのは当然の帰結でした。そして有料会員向けサービス『ダイヤモンド・プレミアム』は順調に会員数を伸ばすことができました。ところが、そうなるとダイヤモンド編集部は『ダイヤモンド・プレミアム』と紙の『週刊ダイヤモンド』の2種類のコンテンツを作らなければなりません。この二つは取材方法がまったく異なるので、編集部が股裂き状態になってしまったのです」(メディア局局長山口圭介氏) 人的リソースが限られる中、この股裂き状態は編集現場に負担となっていた。 そうした中、直近の日本ABC協会の実売部数(2 024年下半期)では、デジタル・サブスクリプションの有料会員数は4万4 877人。また、ダイヤモンド・オンラインのPVは1億1000万台とビジネス系メディアの中ではトップに立ち、オンライン事業が一定規模に成長したと判断。『週刊ダイヤモンド』をリニューアルし、企業・産業系のコンテンツを拡充することで、本来のターゲットであるビジネスパーソンに向けた情報を充実させ、紙の雑誌の市販をやめる決断をしたのである。 これによって、紙に関わる記者はいなくなった。現在は「ダイヤモンドウィークリー事業室」の中に「ダイヤモンドウィークリー編集部」があり、雑誌の編集業務を一元化、デジタルファーストで記事を出している。紙の編集者は、その取材記事を誌面にする。といって、デジタルで人気のある記事を優先するわけではない。「それだとコンテンツが偏ってしまうので、そこはバランスを取ります。デジタルと紙では人気になるコンテンツは違うので、そこはベテランの編集者がうまく差配してくれています」(山口氏) 市販をやめたことで、これまで書店で『週刊ダイヤモンド』を購入していた読者はどうなったのか? 「リニューアル前の『週刊ダイヤモンド』の読者はシニア層が中心でした。実はその中には現在も定期購読をされている方が一定数いらっしゃいます。市販をしていた頃は書店を経由して定期購読をしてくれていた、われわれが書店定期と呼んでいる読者がいて、この方たちがスライドしてくれました。現在は落ち着いてきましたが、想定より順調ですね。今なお定期購読を続けている方はビジネス寄りのコンテンツに共感を得ていると思うので、そうした読者は大切にしていきたいです」(営業局局次長永田誠氏) 誌面の全面的なリニューアルは、どの雑誌でも躊躇する部分があるが、読者の反応はどうだろうか? 「企業、産業情報という当社にとっての王道コンテンツを重視した骨太の特集が増えて、その点を評価されている感触があります。ただ、ネガティブな評価もゼロではありません。たとえば、縦書きから横書きになったことで、それを理由に解約された方もいます。また、薄くなったとおっしゃる方もいます。ただ、ページ数は変わっていません。スタイリッシュになった結果、そう見えてしまうんですね(笑)」(山口氏) 広告面での変化も気になるところだが……。 「それほど大きな変化はありません。定期的に広告会社の方とも話をしながら、デジタルにシフトしていくことを明確に打ち出してきたので、ネガティブな反響はありませんでした。これは、クライアントも含めた説明会を開いて丁寧に説明 『週刊ダイヤモンド』は、1913年(大正2年)に創刊された『ダイヤモンド』をルーツとするダイヤモンド社の看板雑誌であり、ビジネス系週刊誌のジャンルでは32年連続で書店売上げ日本一を達成した、まさに会社の顔だった。その雑誌が、今年4月から市販をやめて「サブスクモデル(会員モデル)」へと大きな決断をした背景には、各社に共通の雑誌市場の低迷だけでなく、『週刊ダイヤモンド』ならではの悩みがあった。 「『週刊ダイヤモンド』は創刊以来、ビジネスパーソンをターゲットにしてきました。ところが、書店で売れるのは、『中高一貫校』『相続』『介護』といったライフスタイル系の特集でした。ダイヤモンド社メディア局 局長山口圭介氏店頭販売をやめたことで、表紙のイメージも大きく転換してスタイリッシュに【CASE2】32年連続書店売上げ日本一から完全サブスクモデルへ転換『週刊ダイヤモンド』6
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