雑誌広告2020_08
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2017年、ブランディングを手掛けていた「セブンスター」銘柄の会員制サイトに、四話完結の短篇を連載していただきました。こちらが依頼したテーマは「人生の相棒」。その人の人生に寄り添い、悩んだり迷ったりしたときに力をくれる存在について、小説で伝えてくださいというお願いでした。サイトの読者は成    7人喫煙者のお客さまですが、作品内で取り上げるアイテムは必ずしもたばこでなくて構わない。むしろ何か別のものに置き換えることで、お客さまとセブンスターの関係性を比喩的に表現していただきたいと考えました。あまりにも身近な存在について、人はしばしば忘れがちです。たばこもまさに同じで、お客さまの多くは長年の習慣の中で「何となく吸っている」状態になってしまう。ですが中長期的なブランド・ロイヤリティを醸成するには、お客さまの一人ひとりにたばこと付き合う自分なりの価値を思い出していただくことが重要であると考えています。ご存じのように昨今、喫煙に対する社会の厳しさは小さくありません。にもかかわらずたばこを選択してくださっているお客さまに、「今は意識していなくても、かつてはあなたにもたばこが人生の相棒だった時期があったのでは?」というポジティブなメッセージを投げかけたい。それには画像や動画など直接ビジュアルに訴えかける手法よりも、読者がそれぞれ想像を巡らし、自分の体験と照らし合わせられる小説こそ最適ではないかと。いただいた原稿は期待をはるかに上回るものでした。主人公は若い男性で、学生時代から付き合ってきた恋人と結婚し、海外へ新婚旅行に出かけるところです。晴れがましい時間なのに、彼は心にわだかまりを感じている。やがて空港の喫煙所での回想がきっかけとなり、彼女との出会い、そして二人の人生に影響を与えたある友人の存在が浮かびあがってきます。そこではたばこという小道具と忘れがたい旧友の存在が見事に重なり、かつて“相棒”が与えてくれたポジティブな影響が重層的に描かれていきます。こちらの発注を完璧にクリアした上で、朝井作品ならではのヒネリや読後の余韻も感じさせる仕上がりは、まさに私たちJTが伝えたかったメッセージそのものでした。読み手の想像力を喚起する小説は、実は制約の少ない表現形式だと言えます。一律に広く伝えるのではなく、お客さま一人ひとりのイメージに深く訴える効果がある。中長期的なブランド・ロイヤリティを高めていく手段として、これからも小説には注目してきたいと考えています。クライアントが伝えたいメッセージをしっかり盛り込みつつ、読み物としての面白さも備えた朝井リョウさんの〝お仕事小説〟。その仕上がりと効果について、発注する側はどう捉えているのだろうか。日本たばこ産業のマーケティング戦略部(当時)で、本書収録の連作短篇﹁胸元の魔法﹂を担当した平谷朋也さんに聞いた。クライアントの声小説には、お客さま一人ひとりのイメージに深く訴える力がある日本たばこ産業株式会社たばこ事業本部 事業企画室平谷朋也氏

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