雑誌広告2025_03
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 たとえば、2024年12月号のサブタイトルは「欲しいものは、僕のもの!」。それまでのタイトルは、特集のテーマをシンプルに提示するものだったが、よりインパクトのある、広告的なコピー仕立てに変えた。さらにその下には紹介文を挿入。「お前のものは、オレのもの。オレのものも、オレのもの」とウィットに富んだ表現とともに、特集テーマである「セルフギフト」について言及されている。その文章はまるで、同じクラスの友人が授業中に回してきた手紙のように軽やかで、読んでいると、思わずにやりとしてしまう。 「この号は『ギフト』特集だったのですが、家族やパートナーではなく、自分に贈るセルフギフトをテーマにしました。タイトルや紹介文の狙いとしては、いつもは手に取らない方にも、『次号のメンノン、面白そうだな』と感じてもらい、雑誌に触れるきっかけづくりになればという思いがあります」 仮に、この号のタイトルが「おすすめセルフギフト特集」だったらどうか? セルフギフトに興味がない人は立ち止まらないだろう。だが、「欲しいものは、僕のもの!」と、キャッチーなタイトルにすることで、「自分が気づいていない、自分が欲しいものに出会えるかもしれない」という〝興味〟がそこに生まれる。 「個人的にも、広告コピーを見るのが好きで、日頃から注意して見るようにしています。やっぱり、いいコピーには、心を動かすチカラがありますよね。そのチカラを編集にも取り入れたいと考えたんです」 メンズ美容のトレンドに、『MEN'S NON-NO』はいち早く着目。定期的に情報を発信している。そのなかで、2025年1・2月合併号の特集タイトルは「メンズビューティ新世紀」とした。これまでのビューティ=スキンケアから、定義を拡大し、メンズメイクやボディメイクもそのひとつであることを、次号予告の紹介文では触れている。もちろん、遊び心も忘れていない。「僕らはDOする。君はどうする?」の一文には、友人から届くLINEメッセージのような〝ゆるさ〟があり、押し付けがましさは皆無だ。 「感度の高い、10代後半から20代前半の読者にとって、メンズメイクは特別なものではなく、身だしなみの一種となりつつあります。だからこそ、特集の内容をだらだら紹介されても興醒めするだけですし、『DOする』という言葉遊びを交えることで、気軽に手に取ってもらえたらと思いました」 「一切無駄のない雑誌って、たのですが、あとからスタートしました。編集長の言葉で、なぜこの特集を届けるのか、取材を通して感じたこと、あるいは伝えたいことは何なのか、そこにこそメッセージが凝縮されますし、必要だろうと考えたからです」と杏子氏は語る。 編集長としての顔を持ちながら、ファッションディレクターとしても活躍する杏子氏。Editor's Letterを書くときに、その境や目線を意識していることはあるのだろうか? 「私自身が初代編集長ということもあり、私と『Numé ro TOKYO』は限りなくイコールの存在だと思っていて、その境のようなものはあまり意識していないですね。自由に書いています」 だから『Numéro TOK NON-NO』は2026年に40周年を迎えます。ですが、伝統に縛られることなく、余白を大切にしながら、今後もさまざまなチャレンジをしていきたいと思っています」きっと読んでいて息苦しいと思うんです。どこかに余白の部分がないと、つまらない。それは店舗も同じで、売れ筋アイテムばかりが並んでいても、魅力的には見えないですよね。『MEN'S ただの説明では、読者は興醒めしてしまう余白が生む魅力を大切に、チャレンジし続けたい2007年に創刊。今年19年目を迎えた『Numéro TOKYO』は、フランス発インターナショナル・モード誌として、幅広く東京の〝いま〟を発信し続けている。巻頭のEditor's Lett erは、田中杏子編集長が冒頭に、読者に直接言葉を届ける特別な場所だ。 「私は『Numéro TOKY O』を創刊させるべく編集長に就任しました。創刊当初はフランス本国に合わせてEditor's Letterはなかっ*  *  *『MEN'S NON-NO』2024年12月号の次号予告CASE2□Numéro TOKYO□扶桑社編集長田中杏あ子こ4

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