報がありません。そのなかで手に取ってくれた読者に対して、そもそもなぜこのテーマを今回取り上げたのか、どういった視座から大切だと思っていて、何を届けたいかを伝える場所として、EDITOR'S LETTERがあります」と松島編集長は語る。 言わば、EDITOR'S LE TTERは読者のマインドセットを整えるもの。特集に触れる前に読むことで、理解を促進する機能を持つ。 「誌面で扱う内容は、テクノロジーやその文化がもたらす未来です。しかしその未来は勝手に訪れるわけではありません。『WIRED』では、あなたが未来にコミットすることで、未来は変えられるんだという手触りテーマは「リジェネラティブ・シティ」。EDITOR'S LE TTERのタイトルは「未来は都市にある。ただし違うかたちで」だ。文中では「都市の未来とはいわば巨大船舶のようなもので、いま必死に舵をいっぱいに切っても、曲がり切るには途方もない時間がかかる」と、そこに潜む問題が読者と共有され、「オルタナティヴな都市のかたちを模索するのが今号の特集の狙い」であるといった解題が展開されている。 「いまも都心には高層ビルを届けることを大切にしています。そのための道筋を、EDITOR'S LETTERでは書くことを意識しています」 未来を実装することは、未来を予測することではない。複数の未来の可能性を提示し、読者が選択し、選んでいける。そんな雑誌であることを、『WIRED』は常に心がけている。だからEDITOR'S LETTERでは、特集テーマが提示する可能性について、一歩引いた視点からまず描き出していく。 たとえばVOL●54の特集ィにファッション業界の注目が集まっています。彼ら、彼女たちがファッションアイコンと化しているからです。その関係性の中に『Nu méro TOKYO』が加わることで、より商品を魅力的に見せ、彼らのブランディングにもつながるといった相乗効果を生み出すことができると考えています。ブランド価値の向上を実現するパートナーとして、今後もさまざまな形で取り組みを進めていけたらうれしいですね」くて、時代や環境にあわせて、しなやかに生きることが大切だと思っていますし誌面でも、そう伝えています。極論に走るのではなく、バランス感覚を持って、しなやかに生きていく。そういうスタイルを常に提示しているつもりです」 今年2月で丸18年。時代が変化しても、変わらずに愛され続けている理由は、そんな〝しなやかさ〟にあるのかもしれない。 そうしたこだわりは、読者との深い信頼関係の構築につながった。 「読者の中には誌面で紹介された、数千万円のアイテムを購入される方もいるんです。それは、モノの価格よりも、スタイルを届けることにこだわってきた結果だと捉えています。今年3月、創刊19年目を迎え、多くの企業やブランドの方にも雑誌を認知していただけるようになりました。最近だとK-POPアイドルをはじめとする、セレブリテスタイルを届けることで育まれた、読者との深い絆 『WIRED』は、未来を実装するメディアだ。少しずつでも未来を変えていけるような、具体的な影響力のあるメディアを目指している。だから往々にして、その中身はとても骨太だ。雑誌の冒頭にある「EDITOR 'S LETTER」は毎回、これから始まる読書体験におけるナビゲーションとして、重要な役割を果たしている。 「『WIRED』の表紙には、ロゴと特集テーマ以外の情* * *CASE3□WIRED□日本版コンデナスト・ジャパン編集長松島倫明松島倫明氏(下)、『WIRED』日本版VOL.55表紙(左)読者と目線を合わせながら、本題へと導く未来を語る前に、現在を俯瞰し、相対化する6
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