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Training Program研修のご案内

研修のご案内

雑誌メディアは他マス媒体と異なり、海外広告主や海外提携雑誌も多くあります。世界各国には様々な雑誌があり、雑誌そのものの販売方法や雑誌広告の役割も異なっています。当協会では毎年「海外研修団」を派遣し、雑誌広告に携わる会員の皆様の視野の拡大、会員間での課題発見や情報交換、懇親の場としての研修を行なっております。

セミナーのご案内

「2023年海外研修団レポート」(2024年会報1月号掲載より)

欧州で体感。今、私たちが知るべきは「世界の中の日本」
団長 長崎亘宏(講談社)

コロナ禍を経て再始動した私たち研修団が迷わずに選んだテーマは「アフターコロナ」でした。パンデミックがヨーロッパの日常生活やビジネスにもたらしたイノベーションをその肌で感じたかったのです。ところが実際の第一印象は「既視感」だったと思います。欧州で起こった進化のほとんどは日本と同様のDXで語ることができたからです。日常生活ではリモートワーク、電子決済。ビジネスにおいては雑誌コンテンツのデジタル拡張、読者サービスの拡充など。テクノロジーは世界をより狭く、画一化したのではないでしょうか?
そこで私たちは先進性ではなく、同時代性における日欧出版ビジネスの違いに注目しました。
①メディアのブランド価値(定期購読を基点としたブランドビジネス)
②二分されたデジタルとフィジカルの価値(プレミアム化する印刷物)
③社会基盤としての価値(活字メディアへのシンパシー、D&Iが生む広告市場)
それらを学ぶ一方で私たちは、フランクフルト・ブックフェアを巡りながら、コミックにとどまらない、日本の出版コンテンツが持つ無限の可能性を感じました。
私たちは今「世界の中の日本」を知り、それを発信するという分岐点に立っています。さて、今回のメンバーの生まれは60~90年代にわたり、男女比はほぼ5:5。それは多様な価値観の共存を意味しています。是非、それらをお楽しみください。

イギリス 雑誌協会の取材から/FIPP
出版産業の未来を握るカギとは?雑誌メディアの価値を再定義せよ
篠崎広道(光文社)吉田侑樹(ムサシノ広告社)是洞沙紀(文化企画)

1925年にフランスで設立されたFIPP(国際雑誌連合)は、世界中の雑誌協会、出版社などが加盟する世界で最も古く権威のある国際的な組織である。今回スピーカーとして登壇したCEOのジェームス・ヒューズ氏からは、目まぐるしく変化する世界情勢、コスト高騰という状況下において、出版業界はマネタイズのための手段をいくつも開発しなければならないという課題と、最も重要な手段と位置付ける広告収入の現状について話を聞くことができた。

ヒントは「アナログレコードの復活?」
広告収入は2008年をピークに減少を続け、特にプリントメディアの広告費の落ち込みが激しく、2022年にはオンラインメディアの広告費に抜かれている。しかし、ヒューズ氏は以下のように主張する。「オンラインメディアの広告収入は収益性が低く、プリントメディアの最大値には及ぶことはないだろう。プリントメディア全体の発行部数は減少傾向だが、収益性にアドバンテージがあるので、それを捨てることはない」。このような状況において、ジェームス氏は「ひとつの産業がヒントになる」という。それは「音楽産業」だ。音楽産業は、出版産業とほぼ同じ1999年にピークを迎え、その後2014年まで縮小が続くが、現在は1999年と同等以上の規模まで回復をした。そこにはデジタルストリーミングサービスの成長とともに、「アナログレコードの価値向上、復活」という側面がある。出版産業も収益性改善のためにアナログ(プリント)がよりリッチなメディアとして価値を見直され、再定義されるべく取り組んでいく必要があると述べていた。

読者データをもとにしたマネタイズの可能性
出版産業を取り巻く環境が大きく変化していく中で、「AI技術の台頭」に対してジェームス氏は特に強い危機感を抱いていた。AI技術によるコンテンツに飲みこまれないためにも、常に時代の先を見据え、法的な規制・ルールの策定や信頼性のあるコンテンツを発信していくことが大切と訴える。同じ日に話を聞いたPPA(英国雑誌協会)も同様にAI化への危機感を持ち、コンテンツの「信頼性」を担保することの重要性を指摘していた。正しくファクトチェックを行い「ジャーナリズム」の価値を高め、よりプレミアムなメディアになることで、高いエンゲージメントが生まれるという。出版産業によるユニークなマネタイズ事例についても聞かせてくれた。スウェーデンの『Marlin』は釣りを趣味とし、中でもトローリング愛好者を対象にしたニッチなジャンルの専門誌だ。発行部数は2万5000部に留まるが、読者の72%が船を所有するなど、その読者情報をもとに「カジキ釣り大会」を企画、「読者との体験、関係を所有する」イベントとして、参加料、入場料収入などで利益を生み出し、事業化しているという。イベントのほか、有料コンテンツやEC展開など、読者データをもとにしたマネタイズの可能性を示唆していた。出版産業に必要なことは、読者に向き合いながら、「多様性」を持った考えのもとに開発される事業展開だとジェームス氏は訴える。出版の枠に留まらず、各社それぞれが持つ読者との信頼関係の上に成り立った、オリジナルのマネタイズ方法を開発することが求められている。

ドイツ ブックフェアの取材から/Frankfurt Book Fair
MANGAの次なる日本の一手は?ブックフェア訪問で見えたこと
三浦勇人(世界文化社)吉田千晃(日之出出版)

研修団一行の最終日はフランクフルト・ブックフェア(FBF/Frankfurt Book Fair)へ。ドイツ・フランクフルト市内で開催される、世界の書籍トレンドが一堂に感じられる世界最大規模のブックフェア。じつに500年以上の歴史ある見本市で、今年は戦後再開から75回目を迎え、10月18日~22日まで5日間開催された。
会場内は中庭を取り囲むように6つの棟が並び、ドイツ国内で流通する出版物をはじめ、国別、テーマ別、ジャンル別など棟内各ブースでそれぞれに展示されている。中央に位置する中庭には、さまざまな出店がオープンテラスを広げ、ドイツらしくビールを片手に商談を行う姿も多くみられる。ドイツ国内にいながら、さながら各国の文化交流で賑わう港町のようだ。

日本の出版社も出展!絵本、児童書を前面に……
日本の出版社として出展する、小学館、集英社、講談社ブースを訪れると、慣れ親しんだ日本語と馴染みある書影の展示に少し心が安らいだ。コロナ禍前の2019年頃の日本ブースのトレンドは圧倒的に漫画だった。しかしながら、漫画がMANGAとして世界的に浸透したこともあり、現在では新たな挑戦として、絵本、児童書に注力している。絵本賞8冠、47万部突破の国内ベストセラーとなった『大ピンチずかん』をはじめ、日本の絵本は児童書領域でも十分に戦えるとみている。日本らしい表現として漫画ライクなイラストやタッチ、キャラクターが際立つ日本の絵本が海外で受け入れられやすくなってきている。

日本初のコンテンツがここ10年で着実に浸透
このたびのブックフェアの大きなトレンドに、「猫」、「お店」、「コーヒーショップ」が挙げられる。グッドフィーリングなコンテンツのニーズが高まっていることに加え、海の向こうの日本の文化、ノスタルジックな空気感が期待されている傾向があるよう。今回も、辻村深月、村田紗耶香が現地で講演を行うなど、日本の女性作家への興味関心の高まりが感じられ、以前にも増して来場者から日本の作家の名前を聞く機会も増えたとのこと。日本のコンテンツは、まだまだ全世界的にはマイノリティだが、この10年で確実に様子が変わってきている。ちなみに日本の小説はイタリアで人気が高いとのことだが、情感豊かな国民性と捉えれば納得できる。
一方、児童書、書籍の海外進出においては、翻訳が極めて大事となる。作家が紡いだ世界観をいかにして各国の言葉で翻訳、表現できるかがカギを握るものの、まだまだ日本語を手がける翻訳家は全世界的に数も少なく、優秀な翻訳家の確保や育成も課題のひとつ。国を挙げたサポート体制も必要だろう。
特に欧州においては、幼い頃に日本アニメを観て育った世代が親となり、MANGA、ANIMEが子世代へと引き継がれている。サイクルが2巡、3巡を迎えることで、ますます日本のコンテンツが世界に広がる足元が固まった。次なる日本の挑戦として、漫画ライクな児童書と、日本の情景や心情を丁寧に紡ぐ小説を据える。日本発の児童書や書籍が、世界の書店の本棚に多数並び、それらを小脇に抱えた現地少年少女の姿が見られるその日を期待したい。

日本雑誌広告協会 海外研修団派遣実績

実施年実施回日数訪問国訪問地主たる訪問先
2023第56回8日間イギリス/ドイツロンドン/フランクフルト国際雑誌連合(FIPP)・PAMCo・Amplify・Teads・Hearst UK・Frankfurt Book Fair・CARLSEN
2019第55回8日間イギリス/ドイツロンドン/ベルリン英国雑誌協会(PPA)・TimeOut・PAMCo・YouTube・AxcelSpringer
2018第54回8日間イギリス/ドイツロンドン/ミュンヘン国際雑誌連合(FIPP)・英国雑誌協会(PPA)・DENIS・Economist・TI Media・Amplify・ドイツ雑誌協会(VDZ)・MediaGroupMedwith
2017第53回8日間アメリカ合衆国ニューヨーク米国雑誌協会(MPA)・インターネット協議会(IAB)・電通アメリカ・VIZEUM・MaCann Erikson New York・MaGarry Bowen ,LLC・The Economiist・Hearst Corporation・Conde Nast Publications・Time Inc・Rodale Inc.・IDG
2016第52回8日間アメリカ合衆国ニューヨーク米国雑誌協会(MPA)・電通アメリカ・VIZEUM・Meredith Corporation・Time Inc・Rodale Inc.・IDG
2015第51回8日間アメリカ合衆国ニューヨーク米国雑誌協会(MPA)・インターネット協議会(IAB)・VIZEUM・Hearst Magazine International・American Media Inc.・WINNER MEDIA LLC